設備管理業務の関連資格
設備関連業務は、建築設備機器の運転保守業務であり、対象となる建築設備には、
- 電気・通信設備
- 空気調和設備
- 給排水設備
- 消防用設備
- 昇降機設備
等がある。新たな事業として設備管理業務を受注する場合、ビル管理会社として備えなければならない資格等は特に定められていない。しかし、一般的に設備管理業務の場合は、それぞれ受託物件に設置されている建築設備機器を運転保守するに際して、法令で定められた管理者をビル管理会社の従事者から選任する場合が多く、そうした意味から、受託物件に設置されている機器等の運転保守のために必要とされ資格を有する者が必要である。
電気・通信設備の関連資格
電気・通信設備の運転保守業務とは、受変電設備、屋内配線設備、照明設備、非常用発電設備、電話設備、蓄電池設備等の建築物に設置された電気・通信関係の諸設備を運転保守する業務のことであり、この業務に関係する資格には、電気主任技術者、電気工事士、特種電気工事資格者、工事担任者、電気工事施工管理技士等がある。電気主任技術者は、電気事業法によって自家用電気工作物の設置者が選任することが義務付けられており、電気工事士、特殊電気工事資格者、工事担任者は日常の小修繕など電気・通信設備の工事を行うに際して必要な資格として電気・通信設備の運転保守業務と深い関係がある資格である。
電気事業法において、自家用電気工作物の設置者は電気主任技術者を選任することが定められている。この電気主任技術者の選任に際しては、本来、設置者の従業員の有資格者の中から選任することとされているが、受電容量が1000kw未満の自家用電気工作物にあっては、指定法人に保安業務を委託することによって不選任が認められている。
また、電気事業法の運用面において、設備の総合管理契約を締結しているビル管理会社従業員の有資格者を電気主任技術者として選任することも認められている。したがって、電気設備の運転は保守業務を受託するに際して、ビルの所有者(設置者)から電気主任技術者の選任を求められた場合は、電気主任技術者の資格を有するものが必要となる。
電気主任技術者の資格には3種類(第1種電気主任技術者〜第3種主任技術者)の資格があり、それぞれ自家用電気工作物の受電電圧により必要とする資格の種類が定められている。また、受電容量500kw未満の自家用電気工作物にあっては、所定の学歴もしくは第1種電気工事士の資格を有する者(電気工事士法の規定による第1種電気工事士試験に合格たとみなされる者を除く)を電気主任技術者として選任(選任許可)することができる。
表1は、自家用電気工作物の規模と主任技術者との関係を示したものである。
表1−2自家用電気工作物の規模と主任技術者
自家用電気工作物の規模 | 免許の種類 | 専任形態 | ||
受電電圧 | ||||
特別高圧 (7000Vを超えるもの) |
構 内 |
170,000V以上 | 第1種電気主任技術者 | 専任 |
50,000V以上170,000V未満 | 第1〜2種電気主任技術者 | 専任 | ||
50,000V未満 | 第1〜3種電気主任技術者 | 専任 | ||
構 外 |
100,000V以上 | 第1種電気主任技術者 | 専任 | |
25,000V以上100,000V未満 | 第1種〜2種電気主任技術者 | 専任 | ||
25,000V未満 | 第1種〜3種電気主任技術者 | 専任 |
自家用電気工作物の規模 | 免許の種類 | 専任 形態 |
|
受電電圧 | 受電容量 | ||
高圧 (600Vを超え7000V以下) |
1,000kW以上 | 第1〜3種電気主任技術者 | 専任 |
1,000kW未満 | 第1〜3種電気主任技術者 | 専任・兼任 | |
500kW未満 | 第1〜3種電気主任技術者 | 専任・兼任 | |
選任許可(注1) | 専任 |
注1:第1種電気工事士の資格を有する者(電気工事士法の規定による第1種電気工事士試験に合格したとみなされる者を除く)もしくは所定の学歴を有する者
なお、電気・通信設備の運転保守業務に関係する資格である電気工事士、特殊電気工事資格者、工事担任者(アナログ、デジタル)、電気工事施工管理技士等については、関係資格一覧に適用業務の範囲等を記載してあるので参照のこと。
空気調和設備の関連資格
空気調和設備の運転保守業務を受託するに際しては、関係の深い資格にボイラー技士、冷凍機械責任者がある。それぞれ受託物件にボイラーーもしくは冷凍機が設置されている場合に必要となる資格である。
ボイラー技士は、ボイラーを取り扱う場合に必要な資格であり、また、ボイラーの取り扱いに際して選任しなければならないボイラー取扱作業主任者に求められる資格でもある。 ボイラー取扱作業主任者は、小型ボイラー以外のボイラーを取り扱う場合に選任しなければならないことが定められており、ボイラーの能力により必要になるボイラー技士の等級は異なる。したがって、受託物件のボイラー取扱作業主任者の選任を求められた場合は、設置されているボイラーの能力と資格との関係を示したものである。
表1−3ボイラー能力とボイラー取扱作業主任者の必要資格
ボイラー能力 | ボイラー取扱作業主任者の必要資格 |
伝熱面積 500m2以上 廃熱ボイラーは 1,000m2以上 貫流ボイラーは 5,000m2以上 |
特急ボイラー技士 |
伝熱面積 25m2以上500m2未満 廃熱ボイラーは50m2以上1,000m2未満 貫流ボイラーは250m2以上5,000m2未満 |
特急〜1級ボイラー技士 |
伝熱面積 25m2未満 廃熱ボイラーは50m2未満 貫流ボイラーは250m2未満 |
特急〜2級ボイラー技士 |
このほか、ボイラーに関係する資格としてボイラー整備士、ボイラー据付工事作業主任者がある。各資格については、関係資格一覧に適用業務の範囲等を記載してあるので参照のこと。
冷凍機械責任者は、冷凍設備を設置している事業所で、高圧ガスの製造に係る保安に関する業務を管理する冷凍保安責任者を選任する際に必要とる資格である。
冷凍保安責任者を選任しなければならない事業所は、1日の冷凍能力が20トン以上の製造設備を有する事業所で、製造設備の冷凍能力により必要とされる冷凍機械責任者資格の種類は異なる。したがって、受託物件の冷凍保安責任者の選任を求められた場合は、製造設備の冷凍能力に合わせた資格者が必要になる。
表1−4は製造設備の冷凍能力と冷凍保安責任者の資格との関係を示したものである。
注3:フロンを冷媒ガスとする製造設備は50トン/日
可燃性ガス及び毒性ガス以外のガスを冷媒ガスとする自動制御装置を備えたユニット型製造設備であって、体積圧縮機については60トン/日、遠心圧縮機については160トン/日
表1−4製造設備の冷凍能力と冷凍保安責任者の資格
製造設備の冷凍能力 | 冷凍保安責任者の必要資格 |
1日の冷凍能力が300トン以上 | 第1種冷凍機械責任者 |
1日の冷凍能力が100トン以上300トン未満 | 第1〜2種冷凍機械責任者 |
1日の冷凍能力が100トン未満 | 第1〜3種冷凍機械責任者 |
このほか、空気調和設備に関係する資格には、冷凍空気調和機器施工技能士がある。冷凍空気調和機器施工技能士の適用業務の範囲等については関係資格一覧を参照のこと。
その他設備管理業務の関連資格
その他設備管理業務の関連資格には、給排水設備関係の資格として浄化槽管理士、浄化槽技術管理者、空気調和・給排水衛生設備関係のの資格として管工事施工管理技士、また、消防用設備関係の資格として消防設備士、消防設備点検資格者、危険物取扱者、防火管理者、昇降機設備関係の資格として昇降機検査資格者等がある。
このほか、平成8年に新たに技能検定職種に加えられたビル設備管理技能士は、これまでの設備管理業務の関連資格のように、設備システムごとの単一の資格ではなく、設備管理全般を横断的にカバーする総合的な管理技術者の資格として今後必要度を増すであろう。
なお、各資格の業務の適用範囲等については、関係資格一覧を参照のこと。